第三章・ヒロ母VS斉藤
次の日…斉藤教師が朝のホームルームを行うべく、職員室を出て斉藤のクラスに向かう。
教室に入ると、見慣れない中年おばさんがそこに居た…
斉藤「なんですか?貴方は?ここは学校ですよ。保護者の方でしたら、職員室へどうぞ。」
中年「あなたが、斉藤先生ですか?」
斉藤「ええ、申し送れました私このクラスの担任を勤めさせて頂いております、斉藤正志と申します。」
中年「あなたが、うちのヒロちゃんを…」
斉藤「話が良く見えないのですが、込み入った話であるのなら応接室へ参りましょうか。」
中年「そうですね。ここでは少し話しづらいですから。」
そう言って、斉藤教師と謎の中年おばさんが応接室へ向かう。
斉藤「さてと、そろそろ貴方は誰なのかをはっきりさせたいのですが…」
中年「私は、先日貴方にリンチされた、鈴木ヒロユキの母です。」
斉藤「ほぉ、それでヒロユキ君のお母様が一体どのような御用で?」
ヒロ母「分かりきったことを、良くもぬけぬけと言えますね。即刻、私のヒロちゃんに
謝って下さい。さもないと、教育委員会に訴えますわよ。」
斉藤「ちょっと待って頂けませんかね、まず私が何時、御宅のヒロユキ君をリンチしたのかはっきりさせましょうか。」
ヒロ母「何を言ってるんですか!?あなたは昨日、私のヒロちゃんを顔の骨が折れるま
で、警棒で殴りつけたそうですね?これをリンチと言わず、何と言うんですか?」
斉藤「あぁ、あの「指導」の事ですか。彼は事もあろうに、「教師」に逆らったのですよ。それで「指導」したのですが何か問題
でも?」
ヒロ母「指導ってあなた、顔の形が変わるまで殴り続けて何が指導なんで
すか?これは明らかに傷害事件ですよ。」
斉藤「貴方もしつこいですねぇ。「教師」に逆らったら昔はもっと酷かったじゃないですか。寧ろ今の生徒が教師を舐めてか
かるという現状がおかしいと思うのですが、いかがですか?」
ヒロ母「それとこれとは、話が別です!時代が変われば教育方法も変わるのが当然じゃありませんか!あなたは、ただ指導とかこつけて家のヒロちゃんを殴っただけですわ。」
斉藤「わからない人ですね!!!じゃあ貴方は教育の場に立てるとでも?無理でしょう?現場もわからないくせに、分かった
ような口を利くな!生意気なんだよお前!!!大体、貴方のような子供を甘やかす育て方をしている親が沢山いるから、ヒロユキのような、どうしようもない屑
しか社会に輩出されないんだ!分かりますか!?それと、貴方のご子息ヒロユキに謝罪する気持ちは一切ありませんので悪しからず。」
ヒロ母「なっ、何ていうことを言うんですか!?私のヒロちゃんがクズですって!?侮辱するのも大概にして
おきなさいよ!こうなったら教育委員会に報告しますからね。暴力教師がこの学校に居て教師資格を剥奪して
欲しいと。」
斉藤「お好きなようにして下さいよ。まぁそれでも最後に笑うのは私ですけどね。ほっほっほっ。」
ヒロ母「今日はもう帰らせて頂きます。こちらにはヒロちゃんの決定的証言も
あるんですから、言い逃れは出来ませんよ。覚悟しておきなさい。」
その一言を言うと、ヒロユキの母は帰っていった…
斉藤「ほっほっほっ、これは少し面倒になりましたねぇ。それでは、気が進みませんが昔馴染みを頼るとしましょうか。」
ピッ…
斉藤「もしもし、私です、斉藤ですよ。ええ、お久しぶり。今日は少し面倒な頭の悪い母親が来て困ってしまったのですよ。
貴方確か、文部省の大臣でしたよね?揉み消しを一つお願
いしますよ。ええ、いつもの様に…じゃあよろしく頼みますよ。」
数日後、再びヒロユキ母が鬼の首を取ったような顔をして学校に来た。
ヒロ母「斉藤先生、あなたはもうお終いですわね。もう、教師の仕事は永遠に出来ないものと思ってくださいますか?」
斉藤「ああ、そうですね。今日辺りに教育委員会の役員がここに来るらしいですから、その時は是非ご同席願いたいものです
ね。」
ヒロ母「強がっていられるのも、今の内だけです。今日であなたは永遠に、教師免許を剥奪ですわ。」
会話にひと段落つけて、ヒロ母と斉藤が静かに教育委員会の役員が来るのを待つ…
役員「あなたが、息子さんがリンチに遭われたというお母さんですか?」
ヒロ母「ええ、そうです。家のヒロちゃんが、あの暴力教師の手によっ
て…」
ここぞとばかりに、役員に媚を売りそして挙句の果てに泣き落としを敢行するヒロ母。
役員「じゃあ、息子さんに確認を取りたいんで、息子さんを呼んでいただけますか?」
ヒロ母「わかりました。ヒロちゃん。」
ヒロユキ「…こんにちは。」
包帯が顔にグルグル巻きにされているので、声が聞こえにくい。
役員「これは酷いですね。さて、ヒロユキ君。君は斉藤正志先生に、「指導」と冠して理不尽な暴力を受けたの
かい?」
ヒロ母「聞くまでもありませんわ。見てください、この包帯を!これを見たら一目瞭然でしょう?」
斉藤「おやおや、随分と自信がある様で…その自信が勇み足で終わらなければ良いですねぇ。ほっほっほっ。」
役員「まぁまぁ、お静かに。それでヒロユキ君、どうなんだい?」
ヒロユキ「………いいえ、そんな暴力受けていません。」
斉藤「だそうですよ。お母さん、ほっほっほっ。」
ヒロ母「そんな、ヒロちゃん。あの男に怯えることは無いのよ?本当のことを言いなさい。リンチを受けたん
でしょう?」
ヒロユキ「受けてねぇよ。くどいんだよ、ババァ。俺は、「指導」を
受けた後に、勝手にイライラして不良の軍団に突っ込んでこうなっただけだよ。それが格好悪くて斉藤先生のせいにしたんだよ。」
ヒロ母「ヒロちゃん…
ウソよ!家のヒロちゃんがそんなウソをつくハズが無いわ。そうよ、あの男に脅迫されてるのよ!」
役員「まぁまぁ落ち着いて、お母さん。今回はリンチが無かったということらしいので、これで調査は終了しますが引き続き
この学校の監視を続けますので…」
斉藤「要するに、ヒステリックで親バカなお母さんが不良に叩きのめされたヒロユキ君を見て、ヒロユキ君の良く考えれば分
かる様なウソ
を見抜け
なかったって事ですね。本当に迷惑極まりない親バカなお母さんですねぇ。貴方のせいで、授業が二回分も潰れてしまったんですが…それについての謝罪の言葉
は無いんですかね?ほっほっほっ。」
ヒロ母「も、申し訳…申し訳ありませんでした。」
ヒロユキの母はがっくりと肩を落とし、トボトボと一人帰っていった…
斉藤「ご苦労様でした、お二人とも中々演技がお上手でしたね。ヒロユキ君、約束通り今回の「指導」は、ここまでで許して
あげましょう。ほっほっほっ。」
(指導なんて教育委員会に直訴すれば、問答無用で潰れて私はクビになっていたのに、本当に頭が軽いですねぇヒロユキ君
は…ヒロユキ君が脅しに屈しやすい生徒で命拾いしましたよ。それとも、「彼」の脅迫が、余程強かったのでしょうか…まだまだ、私の愉しみを邪魔されるわけ
には行かないのでね…)
ヒロユキ「本当ですか?良かった…これからは、心を入れ替えて勉学に励みたいと思います。これからも宜しくお願いしま
す、斉藤先生。」
役員「いえいえ、斉藤先生の頼みなら何でも聞き入れるようにと上に釘を刺されましてね。
こんなことならお安い御用ですよ。それじゃ、私はこれで…」
役員は行ってしまった。
斉藤「ヒロユキ君、貴方はもっと言葉遣いに気をつけないといけませんよ。さもないと、今度は容赦しませんからね。私の様
にもっと優雅に、美しく喋るよう心掛けなさい。」
ヒロユキ「は、はいっ。今度からより一層気をつける所存であります。」
斉藤「さて、それでは授業に…ああ何と言うことだ。もう始業から二十分も遅れている。さて急ぎますか。貴方は先に行きなさいヒロユキ君。私が教室に入った
ときに席を立っていればまた「指導」ですよ。」
ヒロユキ「はい!それでは、先に教室に行かせてもらいます。教室までの道中、お足元にお気をつけて下さい。」
斉藤「ほっほっほっ。気遣いなど無用ですよ。さて、それでは授業の用意を取りに職員室に向かいますか。」
こうして、かなり強引にヒロユキの「指導」は揉み消され、斉藤教師はい
つもの様に唯我独尊の授業を続ける…
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